ジャンル増やしも兼ねて、今回はライトノベルでも語ってみます。誰もが知ってるようなのを紹介してもつまらないですし、王道一直線なのは大体面白みを感じない人なので、第1弾ながらややマニアックなのをご紹介します。

 今回のお勧めは、『ウィザーズ・ブレイン』。電撃文庫の作品です。簡単に説明しますと、人類が滅亡に瀕した地球が舞台で、魔法を使うことのできる魔法士という人達が繰り広げる物語となっています。
 魔法とだけ聞くと、かなり陳腐なフレーズですが、この作品の魔法の概念はかなーり理系です。どういうことかと言いますと、魔法士は皆、I-ブレインと呼ばれる情報素子が頭に埋め込まれていて、魔法というのはI-ブレインの演算により起こされる、物理現象です。……この時点で、文系の皆様から脱落者出てますか? 大丈夫ですよね? で、演算というのはどういうものかと言うと、物理定数を改変して加速したり、熱量の移動を行ったり、確率を変動させたり……。いや、分かってますよ。理系の人間ですら、ギブする人がいることくらい。

 理系知識がないとちょっと頭痛くなる作品ですが、この作品の根底に流れるテーマには、考えさせられるものがあります。即ち、「大を生かすために、小を殺すのはアリか?」。様々な登場人物が、この問題に対して自分なりの答えを持っていて、激突していきます。一体、最終的にどんな答えが出るのか、非常に楽しみです。
 他にも、「大切な人を殺した相手を好きになってしまったら許せるのか?」などの問題に、おっ!?と思わせるような回答を出してくれます。要は、外観は理系だけど、激しく文系な作品なんですよ。そのことが理系の人にしか分からない分、この作品は損をしてると思います。
 でもまぁ、例えば量子力学を物理の一要素でなく、『量子力学』っていう魔法形態だと捉えなおせば入りやすいのかもしれない。もし興味を持たれましたら、ぜひぜひ。

 私のオススメの話は、『ウィザーズ・ブレインV 賢人の庭』。上下巻構成の話ですが、この話は特に、「大を生かすために、小を殺すのはアリか?」という設問に対して、人間くさい答えを出してくれたから好きです。今月、上中下巻構成となったVIの最終巻も出ますよ。

 では、本日はこのくらいで。明日辺り、さらにコアな話に行こうと考えています……。